座・ノーベルポート   (コンテンポラリー・ハイク)

 

世話人 竹内一犀  TAKEUCHI ISSAI

我が国の発展に貢献する意思のある国内外の先導的人財に、敢えてやや難解と

  言われている現代俳句を通して、日本語の語感を会得していただき、

 感性を高め、創造性をアップすることができるような場を作りたいと思います。

・バイリンガルによる国際交流を通して、上記人財が日本語の表現力を高め、

 ハイセンスなメールやコピーライト等ができるように指導したいと思います。 

 

 竹内栄治(俳句POET 竹内一犀   Takeuchi Issai 同人誌「海原」同人)

 大学同窓会館等での俳句会やオンラインライン・メール等を利用した俳句会を

 含みます。

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    〒430-0918 浜松市中区八幡町221  

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静岡大学浜松キャンパス留学生生活支援相談窓口

NOBELPORT 【ノーベルポート】

代表   竹内栄治 静岡大学電気工学科卒(47E)

静大テクノポート®【浜松工業会】評議員

静大テクノポート® 及び 浜松工業会浜松支部会報【Technopia】 の命名

顧問   静岡大学創造科学技術大学院 下村 勝 教授

     (静岡大学電子工学研究所)

発起人  静岡大学ABP留学生有志の皆様

     静岡大学浜松キャンパス卒業生有志の皆様   

協力   静岡大学浜松キャンパス学生支援課課長及び

静大テクノポート®【浜松工業会】事務局長

設立   2020年8月18日(火) 

趣旨   静岡大学浜松キャンパスの学生やの皆様との文化交流を求めている

     市民の皆様との懸け橋となることです。

     ノーベルポートは市民ボランティアグループのハートリンガルが            

                  行う留学生生活支援の一環として行っている浜松キャンパス内で行う

                 留学生の為の土曜日曜日等の時間外日本語学習会のサポーターとして

                  スタートしますが、ゆくゆくはノーベル賞へのチャレンジ精神を

                   植え付けることができる人財育成教育プログラムを大学の先生や

                   学生や市民やOBOGの皆様と共に作り上げてゆきたいと思います。

事務局    このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。  090-8951-0076 

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2021 5月21~6月19日までの作

 

聖五月地球の真裏に牛啼けり


啼けり;なけり


ABP留学生ラジャセカラン インド より オンライン参加

 

葱坊主折れたる中に抜き立ちぬ

葱坊主: ねぎぼうず

 

一石を投ずる会議梅雨晴間

2021 06 10 

留学生の為の就職地域定着戦略会議

 

真夜に鳴く蛙よ新案ままならず

蛙:かわず

新案:まちの発明屋のなげき

 

蛙鳴くあれは昔の吾子の友


昔ポケットにいれて持ち帰ったかえる

 

こまりごと相談窓口さみだるる   一犀 (2021  05 18)

 

あかつきの出づる光を菜の花に   一犀 (2021  05 13)

 

見入る澄んだ眼差し聖五月    一犀 (2021  05 10)

 

 留学生就職戦線青あらし          一犀 (2021  05 09)

 

 若人よ徐々に目覚めよ初夏黎明    一犀 (2021  05 09)

 

春風の捨て身の我を宜へり        一犀 (2021  04 10)

白木蓮炎を秘めて再起せよ        一犀 (2021  04 10)

ウイルスや見えざる星のありどころ         一犀 (2021  04 10)

しだれ梅鞭須らくうち捨てよ        一犀 (2021  04 01)

桜散るここより先に神宿る                一犀 (2021  04 01)

束の間を悟空の眠る桜かな                一犀 (2021  03 30)

噛み応えある異邦人風光る                 一犀 (2021  03 26)

つつがなく母国へ帰れ桜花                 一犀 (2021  03 26)

言霊をひとつ託せり春の星                 一犀 (2021  03 18)

 

靴底に石くれ噛みて冴え返る               一犀 (2021  03 18)

 

能管のつんざく天や小鳥くる               一犀 (2021  02 21)

 

耕せば鳥集いくる雲にのり   一犀 (2021  02 10)

 

冬林檎優しい話を先にする   一犀 (2021  01 31)

 

落日のつかのま燃ゆる枯野かな 一犀 (2021  01 30)

 

寒林を抜けて夢への肺をもつ  一犀 (2021  01 25)

 

 寒林に第六感を研ぎ澄ます   一犀 (2021  01 20) 

 

ウイルスもヒトも鎮まれ冬月光 一犀 (2021  01 17) 

 

差し伸べし貧に一椀薺粥                     一犀 (2021  01 6)

 

薺粥   :なずなかゆ

ウイキペディア転載

概要

春の七草などを具材とする味ので、その一年の無病息災を願って1月7日に食べられる。

正月の祝膳や祝酒で弱った胃を休める為とも言われる。

この行事は、平安時代には行われていたが、室町時代汁物の原型ともされている。

説話

御伽草子七草草子に、説話が語られている。

楚国に、大しうという親孝行者がいた。両親はもう百歳を越し体がままならず、そんな両親を嘆き悲しんだ大しうは、山に入って21日間もの苦行を行い祈願した。
「私に老いを移してもいいのでどうか両親を若返らせてください」
そこに天上の帝釈天からお告げがあった。
「そなたの願いを聞き入れた。須弥山の南に齢8000年の白鵞鳥がいるが、この秘術をぬしら親子に授ける。ついては、
  • 毎年春のはじめに七種の草を食べること。
  • 1月6日までに7種類の草の集めておくこと。次の時刻に柳で作った器に種を載せ、玉椿の枝で叩くこと。
  • の刻からこれらの種を合わせ、東から清水を汲んできて、これを煮て食べること。
一口で10歳、七口で70歳若返るので、ついには8000年生きることができよう。」大しうはこの教えを繰り返し暗唱すると、この日は正月であったのですぐに山を降りて7種類の草を集め、6日の夕方から教えの通り、不思議な心持ちで夜通し草を叩いた。朝になり、東から汲んだ水で炊いて両親に食べさせたところ、たちまち若返ったのはいうまでもない。これが世に伝わり、噂を聞いた当時の帝はこの親孝行に感動して位を譲った。

 すなわち、七草の由来とともに、ここでは親孝行の功徳を説いた話だったのである

 

白黒のマスクはらませ反駁す                一犀 (2021  01 10)

 

 

マスクして形而上学禅問答                 一犀 (2021  01 10)

 

牛嘗むる飼葉の底や初明かり                一犀 (2021  01 01)

嘗める:堪える意もあり

2020 01 01 nennga

 

 

 

 

 

 

小学生向き俳句集 (参考)

 

https://haiku-textbook.com/haiku-winter-primary-school/

 

 

 

 

 

 

杖ついて老夫ありくよ流星群                一犀 (2020  12 19)

 

出典;方丈記 


「かくわびしれたる者どもの、ありくかと見れば、すなはち倒れ伏しぬ」


[訳] このようにつらい目にあってぼけたようになっている者たちが、歩いているかと思うと、

  すぐに倒れて横たわってしまう。

 

里芋の我に向かいて仏々いう                   一犀 (2020  12 17)

satoimo no  wareni mukaite butsubutsuiu

綿虫や祓い清めて弥栄に    一犀 (2020  12 12)

watamushi ya harai  kyomete iyasakani

冬の水沁みて尚まだ靴が鳴る  一犀 (2020  12 10)

 

紅葉に喉震わせて歌わんと   一犀 (2020  12 07)

 

行く末やマスク震わせ語り合う 一犀(2020  12 10)

 

薄氷や遊んでいるのは群青です 作者不詳(2020  11 30)

リスクへのチャレンジを味わい楽しむことのできる眼差し     短評 一犀   

 

大銀杏我らいつかは立ち上がる 一犀 (2020  11 30) 

 

 

若者と銀杏落葉を歩むべし   一犀 (2020  11 17)

 

実南天呼べど巨象は振り向かず 一犀 (2020  11 08)

 

秋光のひと行く大地正すなり 一犀 (2020  11 08)

 

泣きじゃくる蒼き凝集月のかげ  一犀 (2020 11 07)

     子守歌 竹内一犀 (2020 11 05)

 

秋天にかざして泣く子なだめたり 

 

Soothing a crying child holding over autumn sky Keiko

 

稚児抱いて山駆け降りる秋入日 

  

Holding the child and go down the mountain

at the beginning of setting sun in Autumn day       Keiko

 

満天の星摘む乙女金木犀 一犀 (2020  10 16)

 

 

 

 ひと筋の秋水光る混沌に  一犀 (2020  10 14)

 

混沌とした状態の中に一筋の澄んだ秋の水 が光っている。

 

英訳

 

A streak of autumn water shines in the state of chaos 「  Teddy KURITA 」

 

 

鑑賞 「  栗田無外」

混乱を解消させる道を暗示するが如く一筋の秋水が光っている。

この澄んだ秋水は」混乱した状態から抜け出す為の入り口を意味しているのかそれと

澄み切った一筋の秋水をそのままの状態で維持すべきと告げているのだろうか。

混沌とし世の中で何を成すべきかついて考えさせられる。

作者は一筋の秋水を何処で見て、あるいはどこを

イメージしてこの句を詠んだのであろうか。 私が思い浮かべるのは

山中にたった一筋、光って流れる秋水である。この澄んだ一筋の秋水が混沌とした世の中を明るく変貌した世界へ

繋がっていることを願う。 

 

Appreciation

A streak of autumn water is clean and shines in the state of chaos.

Does it imply a small entrance to get out of the confused world or

tell us that we should maintain the status quo as it is.

I wonder what image or thinking has come  in the mind of the composer of this poem.

What I imagine is a streak of clean autumn water which tricks down deep in the mountains.

It is just a stream, but I  believe it will eventually  lead to a bright  world.   Teddy KURITA

 

 

荘子『渾沌』

南海之帝為儵、北海之帝為忽、中央之帝為渾沌。
南海の帝を儵(しゅく)と為(な)し、北海の帝を忽(こつ)と為し、中央の帝を渾沌と為す。

儵与忽、時相与遇於渾沌之地。
儵と忽と、時に相与(あいとも)に渾沌の地に遇(あ)ふ。

渾沌待之甚善。
渾沌之を待(じ)すること甚(はなは)だ善(よ)し。

儵与忽諜報渾沌之徳曰、
儵と忽と渾沌の徳に報(むく)いんことを諜(はか)りて曰はく、

「人皆有七竅、以視聴食息。
「人皆七竅(しちきょう)有りて、以て視聴食息(しちょうしょくそく)す。

此独無有。
此(こ)れ独り有ること無し。

嘗試鑿之。」
嘗試(こころ)みに之を鑿(うが)たん。」と。



日鑿一竅、七日而渾沌死。
日に一竅(いちきょう)を鑿ち、七日にして渾沌死す。

現代語訳(口語訳)


南海の帝王を儵と言い、北海の帝王を忽と言い、中央の帝王を渾沌と言いました。
儵と忽とが、ある時渾沌の地で出会いました。
渾沌は両者を大変厚くもてなしました。
(そこで)儵と忽は渾沌の恩義に報いようと相談して言いました。

「人は皆7つの穴(目2つ、鼻2つ、耳2つ、口1つ)が備わっていて、これらをもって見たり、聞いたり、食べたり、呼吸をしている。
(しかし)渾沌には(7つの穴が)ない。
ためにしこれ(穴)を開けてあげようではないか。」と。


1日に1つ穴を開け、7日たつと渾沌は死んでしまいました。

単語・解説

儵、忽

どちらも、「迅速、たちまちに」の意味をもち、ここでは「せせこましい人間」を表す例えの言葉として用いられている

渾沌

手の加えられていない無秩序な自然を表す例えの言葉として用いられている

七竅

竅は「穴」を意味する

渾沌死

無秩序な自然(渾沌)に人間らしさ「七竅」を加えることで本来の自然がなくなってしまうという様子を説いている

 

 

 

 地に近き下弦の月に手を合わす  一犀  (2020  10 13)

 

 

 月光やかっては人魚だった泡   なつはづき (神奈川)

 

バイリンガルによる現代俳句鑑賞:栗田無外  KURITA  MUGAI

 

げっこう・や(5文字) かつては・にんぎょ(7文字 ぎょ を一文字)だった・あわ(5文字)

 

 moonlight    ancient times   mermaid  was  bubble

 

 「 」は 「切れ字」即ち一呼吸する

 

moonlight  「一呼吸するancient times   mermaid  was  bubble 

 

moonlight  と ancient times   mermaid  was  bubble とを付かず離れずの

状態にする。

 

 Literally translated: 

 The moonlight was once the bubbles of mermaid. 

 Translated as  Haiku: 

  The moonlight reminds me of the bubbles of an ancient mermaid.  

 

俳句の鑑賞(栗田無外)KURITA   MUGAI :

 

      夜空に輝く月を見ていると、昔の人魚のことが思い出される。

      突然、人の前に美しい姿を現わし、直ぐに水中に潜ってしまう。 

      一時、水泡が沸き立つが、人魚がその泡の先のどこへ行ってしまったか  

                     漁師は知るすべもない。  

      神秘的な人魚のイメージだけが浮かんでくる。

      金色の月光は明るく世を照らすが一体人々に何を照らし  

                     示そうとしてしるのだろうか。      

Appreciation of the Haiku:

                 When I look at the moonlight shining brightly, my thoughts go back to

                the ancient mermaid that burst upon the scene and fascinated the fishermen. 

                 And then she  dived into the water.  They could only see the forms of the sea.

                 They could hardly know  where the mermaid went to.   

      What remained in their  memory was just an illusion of the mysterious

      mermaid.   When the people returned to reality, they saw the quiet waves of     

       the sea.

                Waking up from my reverie,  I  try to search what the moonlight intends to usher.

                The harvest moon turns the sky to gold, but there is an invisible world behind.

 

      夜空に輝く月を見ていると、昔の人魚のことが思い出される。 突然、人の前に

      美しい姿を現せ、直ぐに水中に潜ってしまう。 一時、水泡が沸き立つが、人魚は

      その泡の先のどこへ行ってしまったかは知るすべもない。

      神秘的な人魚のイメージだけが浮かんでくる。

      金色の月光は明るく世を照らすが一体人々に何を照らし示そうとしてしるのだろうか。   

 

 

竹の春里に無菌の風生る  一犀 (2020  09 30) 


竹の春

竹は、たけのこの出る時期、栄養を奪われて衰える。秋になると
勢いを取り戻し、葉も青々としてくる。この状態を竹の春という

 

業務用脱臭ウイルスキラー空気清浄機開発中にひらめいた

時にできた句

【参考】 邪念浄化・・・・ウイルス浄化

私は環境技術開発を行いながら、泣き笑いする思いを

実際に触れた大自然の記憶とラップさせながら

俳句に造形する場合があります。

直接的な写生ではなく心象の記録ということで。(竹内一犀)

 

我が影の千々に乱れて曼殊沙華     一犀 (2020  09 30)

 

 

蜘蛛の糸思考の淵に降り光る             一犀 (2020  09 18)

しんがりの湯に入る月を抱きつつ       一犀 (2020  09  17)

蛾に息を掛ければ次はジョーカーだ   一犀 (2020  09  15)

神無月三日に戻れシンデレラ   一犀 (2020  09  13)

パンデミックの中を小柄なニルシャが3才の娘を浜松に連れ戻す為に

大きなボストンバックを2つ曳き、リュックを背負ってスリランカに向かった。

11月3日までに必す浜松に戻れ。さもなければ浜松の企業への入社はできない。

 

 蟻の曳く虫は水面の木の葉かな      一犀   (2020  08  24)

熱風や動輪未だ衰えず              一犀   (2020  08  14)

たましいは透けば尊し水くらげ       一犀   (2020  08  14)

一匹の蟻が動けり地動説                 一犀    (2020  08  12)

地団駄を踏めば蜥蜴がぶるんとす    一犀   (2020  08  07)

末代に送る無菌の玉手箱                            一犀   (2020  08  07)

梅雨晴れ間首伸ばしたり縮めたり        一犀   (2020  07  17)

夏闇に我弾かれて目覚めけり                一犀   (2020  07  17)

 

ひきがえる毒に当たらばひらめける 一犀   (2020  07  09)

逆境がもたらしてくれるものは素晴らしい。

それはヒキガエルのように、見苦しく、毒があるが、

頭の中に貴重な宝石が隠れている

シェークスピア 喜劇「お気に召すまま」より

 

青黴の我が眼光にうごめける             一犀  (2020  07  09)

aokabi

 

自画像は銀歯輝くレントゲン       一犀   (2020  07  09)

立ち位置はここに定めり打たせ滝  一犀   (2020  07  06)

底知れぬ水の究明梅雨深し             一犀   (2020  07  03)

 

新樹光ウイルス森に帰すべし         一犀   (2020  06  18)

 shinjukou uirusumorini  kaesubeshi 

 

揚羽蝶我が胸元を問うて去る         一犀   (2020  06  14)

 agehachou wagamunamotoni otutesaru

 

古希にして我目覚めたり百合の花   一犀(2020  06  14)

 kokinishe waremezametari yurinohana

 

紫陽花を動力として登る坂            一犀(2020  06  14)

 ajisaiwo  douryokutoshite noborusaka

ウイルスの統べる大地よ旱星         一犀(2020  06  14)

ういるすの すべるだいちよ ひでりぼし

Mother Earth  ruled over by the Virus

Covered by stars damaged drought .

            by Nishino Keiko

 

糸紡ぐ全きこころ立葵                 一犀(2020  06  14)

 itotsumugu mattaki kokoro tachiaoi

 

梅雨闇や我見る猫と睨み合う         一犀(2020  06  14)

                            niramiau

  

Plum rain darkness,

Being glared at by a cat,

She and I  shot   a sharp  look each  otherr.

        by Nishino Keiko

 

悲しみの底がほほ笑む聖五月       一犀(2020  05  14)

 In the bottom of deep sadness

 (the virgin Mary) Smiling on St. May

                  By Nishino Keiko

季語 : 

聖五月(せいごがつ)、聖母月、マリア月 
カトリックでは五月をマリアの月とし、熱心な祈りを捧げる。
美しい季節を称える心も加わって「聖五月」と呼ぶ 

 

青嵐鳴らざる鐘を鳴らすべし  一犀 (2020  05  14)

 A blue young raging storm

      Ringing the no sound bell

            By Nishino Keiko

季語 :青嵐「あおあらし」

青嵐は、青々と茂った木々の葉や草を揺さぶって吹く強い風。

 

そこはかとなき静けさや五月闇 一犀      2020  05  03

五月闇:さつきやみ
    5月の夜の暗さ。また、その暗やみ。
    

新型コロウイルス対策の為の外出自粛により、時が止まったようになっており
    いつまで、これが続くのだろうか。
    
 Subtle silence of Self-restraint Darkness in May  

                                                       By Nishino Keiko

  Subtle Silence of Self-restraint
    韻を踏んでおります。(一犀)

 

友の骨拾いし指もて摘む紫雲英  一犀
Tomo no hone hiroishi yubi mote tsumu genge

   Picking the bone of my pal and astragalus

      With my same finger.

                                                        By Nishino Keiko

 

紫雲英野に寝て双翼を得たる夢  一犀
Gengeno ni nete souyoku wo etaru yume

renge 

紫雲英 Genge げんげ(俳句) れんげそう(一般)

 

 

街おぼろパンデミックと隣り合う 一犀 (2020 4 30)

  Town is dimly next to  

                  Pandemic side by side.

                                                          By Nishino Keiko

 

子も親も籠もりて軋むぶらんこよ 一犀 2020 04 15

komooyamo    komorite kishimu    burannko yo

 

 

寄せ合うはこころの響きチューリップ 一犀 2020 04 15

oseauha kokoronohibiki  chuurippu   

Gathering members together

The note of mind

For the sake of Tulip

         Keiko 2020 04 15

 

 

春闇や千のマスクに眼のひかり 一犀 2020 04 14 

このコロナ騒動の中、世界中で力を合わせて

終息に向けて叡智を集結している状態

そこに光が見える。

Darkness of Spring

A beam of light of sprouts(eyes)

On the thousands of masks

私は当初から、このコロナ騒動の中、

世界の叡智に期待をしているので悲観的ではありません。

むしろ楽観的に見ています。

          Keiko Nishino  2020  04  14

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

” Darkness of Spring

 Covered faces

    Thousands of masks

  Tulips waiting to bloom ”

                            Nilusha  2020  04  14

春の闇

春闇

月のない春の夜の闇をいう。潤んだ(うるんだ)闇のそこここに、たしかな春
の息吹(いぶき)が感じられる。

参考

音には泣かぬ妹の嘆きや春の闇  日野草城(ひのそうそうじょう)

おとにはなかぬ いものなげきや はるのやみ

 妹(いも)古語 この句の場合には愛する人 ・・・・

 

 

天敵は不可視なるもの桜騒  一犀 (2020 03 16)

onomatope (2020 03  12)

 

 

アルファベットの子音だけ  オンリー子音

又は 子音と母音 の 会意ではなく 会音

会音(偏) と 会音 (旁) による言葉(単語)

生命体が発する原始的な音と声 

子音と母音にひそむ 人類発生にさかのぼる普遍性

子音と母音の感覚を磨く 語感醸成

 

この町のあしたを思う白木蓮    竹内一犀 (2020 03 10)

よみがえる笑顔のありて花衣    竹内一犀  ( 2020 03 07)

しあわせに罠のありけり雪達磨   福林弘子(愛知)ひこばえ通信2020.3 N0 .48より

手袋を欲しがる狐来そうな夜    田中の小径(愛知)ひこばえ通信2020.3 N0 .48より

風花よ抜歯の跡へ向く舌よ     黍野 恵 (和歌山)ひこばえ通信2020.3 N0 .48より

  

冬の滝水砕かれて真水なる    竹内一犀        ( 2020 02 28) 

未知の巣は照らさざるべし冬ともし 竹内一犀        ( 2020 02 28)

冴え返る心の扉に打つ額  竹内一犀        ( 2020 02 23)
Saekaeru kokoro no tobora ni utsu hitai

冴返る(さえかえる、さえかへる) 初春
    しみ返る、寒返る、寒戻り
    春さき、暖かくなりかけたかと思うとまた寒さが戻ってくること。
   一度暖かさを経験しただけに、より冴え冴えとしたものを感じさせる。


冴返る面輪を薄く化粧ひけり 日野草城

saekaeru omowa wo usuku kesoikeri


山がひの杉冴え返る谺かな  芥川龍之介

yamagai no sugi saekaeru kodama kana

とんがった耳隠さんと春の野に 竹内一犀 (代表句のひとつ)

tongatta mimi kakusannto harunono ni

冬月光青むとまやに兄一人 一犀          (2020 02 09)

huyugekkou aomu tmayani anihitori

 

衣被夜辺の怒りは煙なる  一犀           (2020 02 01)

kinukatsugi yobeno ikariha kemurinaru

衣被:きぬかつぎjapanese food , 根菜類

夜辺:よべ

きぬかつぎとは・・・

きぬかつぎ衣被ぎKinukatsugi)は、里芋サトイモ)の小芋を、皮のまま、茹でたもの。
または蒸かしたもの。

皮には切れ込みをいれ、火が通った後は容易にむけるようになっており、
手で皮をむき、塩やごま、味噌などをつけて食べる。

平安時代、高貴な女性が外出する際に衣をかぶって顔を隠したという「きぬかずき・きぬかづき」が
名前の由来といわれる。

 

誰がためにつま弾く一弦冬銀河  一犀(2020 01 20 )

tagatameni tsumabiji ichigen huyuginnga

 

寒の水万象の気溶解す           一犀  (2020 01 17)

 kan no mizu manshou no ki youkai su

 

行き詰まりの打開や解決には、暖水よりも寒水が効果があり適切な選択となる

ことに注目すべきである。

この俳句は文学と物理、気( Ki energy )

もっと大きく考えれば、森羅万象は地球体を超えた宇宙と私は捉えた、

飛躍しすぎであろうか。  栗田無外

 

The cold water dissolves

frozen life energy of all

in natural and human world.

冬の水は凍りつくように冷たい。

厳寒の水中では小魚は冬眠する。

やや緩んだ水は、凍てついた空気を溶かし

暗い世界から明るい世界へと導く

固まった 気、エネルギーを溶かして道を開く。

森羅万象のあらゆる行き詰まりを打開するのは

暖かさではなく適度な冷たさである。

と とらえると、俳句、英語訳、が

伝えるメッセージは、発想の転換とも言える。

文学、技術、哲学が融合した世界が見えてくる。  栗田無外

Japanese traditional Haiku comes in 17 letters and syllables including

a season word... ( 季語)

While English Haiku is more free.Fore one thing, there are not necessarily four seasons

like in Japan.  17 letters and syllables can not occur in English Haiku, hence it is called as

a short poet in three lines without a season word.

 

寒の水万象の気溶解す

かんのみず ばんしょうのき ようかいす 17phonetic letters in one line

かんのみず  a season word for winter

英語俳句: 

Near( Less or more ) 17 syllables without season word will do.

うつしみに 君よみがえれ 寒椿  一犀    (2020 01 07)

うつしみに きみよみがえれ かんつばき たけうちいっさい 

(2020 01 07 most recent Haiku )

うつしみ  reality, existence

     きみ   you

    よみがえる return to existing world 、~からよみがえる resuscitation from

    かんつばき cold camellia

Translation to English Haiku:

My loving son,

return to the existing world,

supported by cold camellia.

Appreciation/interpretation

A father wishes recovery of his son when he became unconscious all in sudden.

He prays for the deep red petals of cold camellia to give more power to his son.

May he recover himself  by all means !

Please try to appreciate the word sensitivity of strength from the

cold camellia. 

https://fudemaka57.exblog.jp/25186048/

 

 

kantsubaki

 

かんつばき 

cold camellia

 

nenga コピー

 

 

 

2019 12 20 栗田無外

俳句、 Haiku ・・・ HEARTLINGUAL Haiku

初級日本語レベル対象: 日本の俳句の基本のおさらいです。 Review of the basic structure of Japanese Haiku.

Definition.

俳句( はいく)、Haiku is a traditional Japanese short poem with 17  ( 5, 7, 5 ) syllables in one line.

Including  季語(kigo) a season word.

Let’s see and learn the  Haiku by  Mr. Takeuchi Issai(竹内一犀)

A  残る菊 あまねく世事に 背を向けず 

B  のこるきく あまねくせじに せをむけず 

12345   1234567    12345

C   nokorukiku  amaneku sejini  sewomukezu 

12345 1234567 12345

Direct translation of the said Haiku based on  standard syllables.

Remaining chrysanthemums

123             456

facing  all worldly affairs

12          3 4 5        67

Standing  firmly

12             34

残る菊(のこるきく) ➡ 残菊 (ざんぎく)

季語 (きご) a season word for the late fall,

Interpretation:

Usually Chrysanthemums come in their peak in the middle of fall.

There still remaining ones even in the later part of fall.

Some of the remaining ones may look not so beautiful compared to the ones in full blossom

of the season. So they are free from all the  common standards.

This vitalism can be applied to those who are at the later part of their lives.

The aged person who has been weathered through all perseverance of life

think and act forgetting about all the set standards and  may see  some thing new

which is invisible for the ordinally younger people.

Remarks:

Japanese Haiku comes in one line of 17 syllables.

English Haiku is three line poem with 17 or near seven syllables.

To tell the truth, I cannot necessarily understand Mr. Takeuchi’s Haiku,

when it  comes to philosophic contents mixed up with condensed season word and

technical terms of various arts.   TBC, to be continued.

私は俳句教室に於いて 英語を多少、解する生徒的立場が

役どころと思っています。英語のプロではありません。

以上、本日の弁解を添えて失礼します。

Teddy KURITA

( 栗田無外)、浜北区内野台 在住

2019 12 15

     透きとおる命よ我とミジンコの         一犀

 

                       残り菊あまねく世事に背を向けず 一犀

 

2019 12 13

                     枯葉踏む我に未だある底力               一犀     

This Haiku reminds me of my favorite poem, "Youth" written by Samuel Ullman.

While the poem referes to the state of spiritual being, the quoted Haiku implies both spiritural and physical strength.

The old aged person is taking a routine  walk  in a park.

The faster he goes, the mightier  sound of  stepping on fallen leaves he hears.

Probably he must feel that he lives with aging, but he keeps a challenging spirit in his activities.

When he hears the crackle sound on fallen leaves, he reacknowledges that he still has guts.

                                          Teddy KURIT  栗田無外      

           

              “YOUTH”  by Samuel Ullman

“Youth is not a time of life; it is a state of mind; it is not a matter of rosy cheeks, red lips and supple knees;

it is a matter of the will, a quality of the imagination, a vigor of the emotions; it is the freshness of the deep springs of life.

Youth means a temperamental predominance of courage over timidity of the appetite, for adventure over the love of ease.

This often exists in a man of sixty more than a boy of twenty. Nobody grows old merely by a number of years.

We grow old by deserting our ideals.

Years may wrinkle the skin, but to give up enthusiasm wrinkles the soul. Worry, fear, self-distrust bows the heart

and turns the spirit back to dust.

Whether sixty or sixteen, there is in every human being’s heart the lure of wonder, the unfailing child-like appetite of what’s next,

and the joy of the game of living. In the center of your heart and my heart there is a wireless station;

so long as it receives messages of beauty, hope, cheer, courage and power from men and from the infinite,

so long are you young.

When the aerials are down, and your spirit is covered with snows of cynicism and the ice of pessimism,

then you are grown old, even at twenty, but as long as your aerials are up, to catch the waves of optimism,

there is hope you may die young at eighty.”

 

https://www.samford.edu/alabama-mens-hall-of-fame/inductees/Ullman.html

 

青春はと人生の一時期のことではない。心の在り方をいう。。バラ色の頬、赤い唇、やわらかな肢体を意味しない。

青春とはたくましい意志、豊かな想像力やあふれる気概を指す。あふれ出る新鮮な人生の泉でもある。

青春とは臆病な気持ちに打ち勝つ断固たる勇気、安逸を否定する冒険心なのだ。

 

このことは20才の青年よりも60才の人に宿ることが多々ある。 人は歳月によって年を取らない。

想像力の枯渇で年を取る。 歳月は皮膚の皺をつくるが情熱を失えば心に皺をつくる。 

心配、恐れ、自己不信が心を折り精神を灰燼に帰してしまう。

 

60才であろうと16才であろうと人の心には驚嘆への憧憬、子供のような未来への飽くなき探求、

人生のゲームを歓喜する気持ちがある。 あなたまた私心の中心には無線アンテナがある。 

そのアンテナが美、希望、励まし、勇気、力を人や神から受け取る限り人は若く生きる。

 

霊感が絶え気持ちが悲観と皮肉の氷に覆われた時、20才でも人は老いる。

しかし溢れる霊感と楽観の波をとらえれば

人は80才にして若いままこの世を去ることができる。

 

Time frame は取り外して、Samuel Wullman の詩の心に

                                         Teddy KURITA ( 栗田無外 ) 

  

2019 12 7

                       冬水をゴクッと心頭滅却す 一犀

When you are absent minded,

the cold winter water penetrates into your body

separating the inner organs from the brain.

You will reach the region of momentary selflessness.

                                                            Teddy KURITA  栗田無外

俳句は哲学:

Haiku can be referred to philosophy.

This is the belief and the way of Tomoe Takeuchi, my wife

when it comes to making Haiku.

                                                            Teddy KURITA 栗田無外

 

2019 12 5  竹内一犀

       実柘榴や愛することの罪嗤う 一犀

        嗤う(わらう)

      年輪に罅入る音や冬の夜半  一犀

2019 12 2  竹内一犀

      神の留守我と妻居て相祈る   一犀

 

               Since all Gods have  gone,  I and my wife pray  together for divine protection.

                                                        Teddy KURITA  栗田無外

Haiku Explanetion  by   KURITA無外

In the lunar calender, October is the month when All the Gods get together to Izumo Taisya. 

So, it is called ”Kannaduki," the month with out presence of Gods.

The people in general pray to God at the local shrine or at home.  

The Japanese ,神の留守(= absence of God ) in Haiku  is the term which means the early winter.

訳注:since =(神々がでかけてしまい、我が家の神も留守)なので

          divine protection 加護 

   無外-------only one

2019 11 30    栗田無外

柿くわえ火魂となりて発つ鴉  竹内一犀

晩秋、湖上の澄んだ青空に向けて枯れ木からカラスが赤い柿の実を口に咥えて飛び立つた。

黒いカラスと赤い柿は一体化して何人も止めることができない、火の玉の如く決意と力が漲っている。

最後の力を振り絞り、Wind up!

 

A crow flies with a  fire  like fighting  spirit

Holding a red  persimmon in its mouth

 

           Teddy Kurita  栗田無外

 

2019 11 18    竹内一犀

    柿くわえ火魂となりて発つ鴉  一犀

 

 

2019年11月の句                 

             太陽の真中の柿をぐいと捥ぐ

          舌端に罪なる記憶あけび喰う 

          秋光に透く鳥ことり吾娘います    

   山蔭に子等の隠れ家あけび食む   

       

 

           

             筋斗雲大夕焼けを充電す  一犀

孫悟空の乗る筋斗雲が大夕焼けに浮かび真っ赤になりながらエネルギーを蓄えています。

再び千里を飛ぶ為に。

一犀は現在、発熱体から空気ストリーム(以下ストリーム)への熱移動による空気冷却

(空冷)のことを学んでおります。

発熱体の熱をストリームへ移動する場合に空気自体がもともと筋斗雲のようであり、例えば

熱い鉄板がストリームに触れた場合にストリームと鉄板の接触境界近傍のみに鉄板の熱が

ストリームに伝わるだけで、ストリームの内側には熱が伝わりにくいとのことです。

即ち、せっかくエネルギーを掛けて送り込んだ空気ストリームの体積の大半に熱移動

できないということは、空気を送り込むために消費した電力を無駄にしてしまうこととなります。

省電力化が必須である電動移動体(電動自動車・電動飛行体・移動ロボット等)においては

電力ロスを低減するサーマルマネジメントが重要です。

夕焼けには筋斗雲の薄皮表面のみが真っ赤になりますが、薄皮のすぐ内側には夕焼けの赤光が

透過しにくい世界があるかもしれません。

筋斗雲の髄まで大夕焼けに染まらせる為には筋斗雲をめった切りにし、微細化しなければ

ならないのです。

今まさに、この筋斗雲を微細に切り刻む筋斗流剣法に使う剣の打ち方を思念しているところです。                                                                                                                                                        2019 11 03

 

                          私はひとり剣を打つ  ファラリス

           深き地の底からあなたは見出された。

           砂に紛れて眠り、石に包まれて横たわるあなたを見出した者がいた。

          あなたははじめ天の落とし子だった。

          天より下るあなたを軋轢の炎が焼き、石から剥いで孤独とした。

          あなたは天の恵みとして扱われた。

          あなたは人の剣となり、人の手に力を与えた。

          やがて人はより多くを求めた。

          人の強欲な手が、地に眠るあなたを見出した。

          あなたは眠りを解かれた。

          もはや人は天の恵みを待つことなく、あなたを剣となし鎧となし器となし車軸となした。

          あなたの力で地を紅に染め上げ、この世の春を謳歌した。

          人はあなたを履いて地を駆けた。

          あなたを翼として天を駆けた。

         人はあなたを器として炎を振るい、あなたを練り上げた。

         あなたを軸として頑強な棲家を組み、

         あなたを鎧として地の果てを往く車を作り、海の果てを狩り尽くす船を作った。

         人は己らの力を知らしめんがため、あなたを編み上げ天の塔を作り上げた。

         人は人を狩り尽くす弓を作り上げ、あなたの力で地を紅に染め上げた。

         人はこの世の春を謳歌した。

         やがて同じように地の底から、黒き炎が見出された。

         黒き炎は鎧となり器となり… 人は黒き炎を翼として天を駆け…

      あなたがやがて錆び朽ちる間に、黒き炎は永劫に朽ちることなく…、

         やがて人はあなたを投げ捨てた。

         深き地の底からあなたは見出された。

        あなたはかつて血に染まり地を駆け、この世の春と共にあった。

        あなたは再び地に眠った。

        錆び朽ちて地に還り、かつてあったように眠りについた。

        あなたはもはや地を駆けず、天を駆けることもない。

        あなたはもはや見出されず、血に染まることもない。

        あなたは再び地に眠る。

        かつて地を駆けた日を、あなたは思い出すだろうか。

        それともあなたは、ただ安らぎのうちに憩うのか。

        人はあなたを投げ捨てた。

        私はあなたの傍でひとり、昔日を懐かしみ剣を打つ

       (web転載)

                     

 

                          犀の星座
  
   輝く星、暗い星、青い星や赤い星などが内なる
  世界に点在している。これらの星々を繋い
  でいくと、犀の形を髣髴とさせる星座ができ
  ていることに気づいた。
   三十年余年前、赤海亀の保護活動の為に早朝
  の波の音を聞きながら、青梅雨の中、合羽を着て
  浜松の砂丘の汀を歩いていた時にできた句、
  谷底より湧き上がる蛍を獣のように覗き込んだ
  時にできた句、子育てし涙しながらできた句、
  仕事で落胆した時、内より発するえも言えぬ力を
  己に与えることができた句、痴呆の父の眼の
  奥に謝罪の意を感じ、父を許した時にできた句、
  これらのことやその他様々なことごとにより
  発した句はそれぞれが内なる星々である。
   それぞれは一見脈絡が無さそうな多元的な
  場として独立しているが、星達の間に一貫し
  たある種の波動が通低している。
   私にとっては非日常の連続が日常であった。
  どちらかというと悲嘆に暮れる時の句が多く、
  有頂天の時の句や感覚そのものだけでできた
  句は少ない。深奥より発しなかった句は薄ら
  いでいき、危機的な状態にあった時、又は
  その状態を凌ぎ抜けた時に作った句の方が
  時を経ても自分自身に良く響く。
   ここに、私の内なる犀の星座に、この混沌
  とした現代における存在の意味を見出すこと
  ができるようになった。それは極限より湧き
  上がる私の命の振動の表出により、宗教やイデ
  オロギーを超えて、打ちひしがれそうなこの
  世の人々に内在しているエネルギーを呼び起こ
  すことができるかどうかということである。
   その表出とは、主観的な我より発する精神的
  又は肉体的表現で、詩歌はもとより美術、
  音楽やその他の自己表現を含むものである。
   私の表現活動は若い頃、絵を描くことより
  始まり、具象画を描いているうちに現代美術にも
  関心を抱いた。その後、生業の建築設計に従事
  しながら時々俳句をつくることにより、
  芸術とのかそけき関係を保ち続け、「表現」する
  ということの根っこにある意味を求め続け
  てきている。
  「表現すること」・・「今を生きること」とも
  思い、自己と社会との関係性の中において、
  現在の我を描き、又、未来への希望に繋げるもの
  であると考えてきた。現代の様々な事象や古き良
  きものを感受し、人々に感動を呼び起こし、
  更に生きる「喜び」に繋げるものでありたい。
   このことは色々な表現手段において共通し
  ていると思うが、俳句においてこそ可能な表現とは
  何かが重要であると考えている。
  それは伝達自由度の抑制された中での自在な
  表現としての句であるが、その句に対して、
  一方の受け手側にも「自在なる座」という
  「自由な感受場」が必要である。
  ここにおいては、句が自由自在になればなる
  ほど「座」にも主体的にその句の境地を追体
  験できる豊かで自由な感受性が求められる。
  又、互いに境地が分かり合えば作り手と読み手が
  深く繋がり、句座はあらゆる方向により遠くまで
  広がりひとつの宇宙を作り得るかもしれない。
   このように豊かな句座をより広げる為には、
  先ずは多くの星々と出会い、我が犀の星座の星々
  を磨き上げていかなければならないと思う。

 

                                                                      竹内一犀

 

 

     うみがめの回帰  

 今でこそ世界中で「明日からのエコでは始まら
ない」と言っているが、私は二十五年前にエコロ
ジーに目覚めた。
それはある朝四時のことである、当時小学生の息子
が私の寝巻きを引っ張り、海亀に会いに行きたい
と私を起こした。その日から二年の間、私達親子
は五月から八月まで雨の日も風の日も毎朝四時に
起きて、車で30分ほど走り、中田島砂丘に出かけ、
波打際を三キロほど歩いて、赤海亀の上陸を調べ、
産卵を確認して、保護小屋へ移すボランティア活動
を行った。
 その時には渋川の山奥から険しい山道を走って
毎朝やってくる山本りょうたろう君のお父さんの
山本圭輔さんと一緒だった。
時々、保育園に通っていた山本りょうたろう君も
一緒にぴょこぴょこと浜辺を歩いた。
 バギー車や四駆が砂浜を走り回る為に卵が潰さ
れてしまうからだ。又、海岸はゴミだらけであっ
たが、赤海亀保護という具体的なエコイメージを
掲げて市民の心の眼に見える形の活動したことに
より、多くの市民の方々が動き、一切の車両を砂浜
より排除する浜松市条例を作る動機となり、又、
砂浜へゴミを捨てる人もいなくなり中田島砂丘は
原初的な風景に戻った。
 親子みんなで砂浜を歩いたが、私は寄せ来る波の
音を聞きながら、時には青梅雨の雨の中を、また時に
は深い夏霧の中を歩いた。
 ただひたすらに歩いていると、時々、大きな赤海
亀にひょっこり出食わしたことが何度もある。
 砂浜の砂を踏みしめる音、波の音、風、雨の霧が
頬に触れる。
朝日が昇るぞー。
詩が唱が自ずから沸きがってくる無着なアミニズム
の発露があった。
 この時に浜辺で見聞きし、触れた「いのち」の源への
感動を瞬間的に留めおく心のメモ書きが俳句であった。
私はこのメモ帳を今でも大切にしており、八五〇のメモ
書きが溜まっている。
 その後、海亀と仲良しになった息子は、山本圭輔さん
のワゴン車に載せて貰っては、りょうたろう君と一緒に
井伊谷のムササビと戯れたり、渋川の岐阜蝶やホタルを
探しに行ったり、又、海辺では赤海亀以外にもコアジ
サシの保護を行ったり、引佐や渋川の野山を駆け巡り、
鳥に会い、稲を刈り、魚を獲って、溢れんばかりの大自
然の感動を得たであろう。
 息子はその後、浜松祭りの凧揚げ合戦において、風の
又三郎の権化のごとく無風の浜に、一陣の風を呼び、中
田島砂丘の空高く我が家の大凧を軽々と揚げることが
できた。
 この度、不思議な巡り合わせで、私はりょうたろう君
と二十五年ぶりに再会したが、山本りょうたろうは回帰
した親亀のように大自然の中で育まれた大いなる力を
湛えて私の目の前に立っていた。
この浜松に大いなる幸をもたらすものとして。

 

  うみがめの振り返りみる遠江  竹内一犀

 

 

 


    2019 12 15
 
竹内一犀句集 (856句) 

 

 うみがめ

 

うみがめの振り返りみる遠江
初蝶の大河の水を欲りて飛ぶ
岐阜蝶や蛇紋の岩の緩みいて
街おぼろ魑魅魍魎の夜汽車待つ
朧夜のフェリーボートのがらんどう
亀鳴くやビネスカバンの得度僧
石を噛む備中鍬や四月馬鹿
集魚灯ともしゆく舟花の雨
浜昼顔天の羽衣うち染めよ
虹立つやセルリアンブルーの長き靴

10

裏返る吾子の草履や夏来る
声変わりしたる少年呼ぶ蛍
つり銭の音の軽さや衣更
臍出して寝入る童や浮いてこい
炎昼に太き土管の眠りかな
母泣かす子のいて毛虫宙ぶらりん
迫り来る大海原や揚羽
トロールの晩夏の海を曳く重さ
黒鍵の三十六音原爆忌
天の川大樹ゆさぶるいて

20

流星や海亀るゝ倭の国に
稲妻の沖遥かなり小亀這う
夏潮にデッキの我が影立ち上がる
もの想うオランウータン猫じゃらし
子ねずみの稲架の寝床を上げにける
山中に子の声ひびき通草熟る
淡海の底に国あり鰯雲
二鴉の声少しずれたる今朝の秋
冷まじや夜汽車の辿り着きし駅
小劇場はねて奈落に落つる虫

30

谷風にのせて紫雲英を蒔く子かな
しんがりにカナリヤ一羽稲雀
大夕焼け浴びて軍手を洗いける
手品のごとく現れし
初午や紺屋の引きし当り籤
海入日寒鴉の声に今とまる
鎌鼬河童の皿を損なわず
目の玉に邪気まだ潜む冬の蝿
怒りたるペンギンの息白かりし
展望台がひとつ登りくる

40

夜神楽やおみなは里に隠れいて
葉こぼれの寒月光を踏みしめる
船底に光る硬貨や多喜二の忌
小春日の海に三つの汽笛かな
暮れてなお畑に夫婦の頬被り
いまここに我と歩まんかまつかや
山彦はついに返らず冬花火
船底に座して牡蠣割る女かな
踏み惑う己が影あり冬の月
春寒の夜道にひとり迷い込む

50

まどかなる弦音果てなき雪の中
天涯に昇り行く雪見ていたり
大氷柱サタンは夜半に爪を研ぐ
谷ごとに声もつ夜の蛙かな
打ちのめす雨はあらずや葱坊主
玉葱の花天めざす変化球
夏闇や亀は砂丘に息を吐く
青葉潮深く墜ち行く沖の鳥
青梅雨の砂丘にひそむ鰓呼吸
巻尺の零夏草を這い戻る

60

掃除機の先より啜る夏の闇
全身の口腔孔穴夏闇に
光陰は行間にあり雲母虫
不死男忌や鉛管つなぐアセチレン
高熱のコンクリート壁脱力す
炎熱の機関車自由落下の日
悲しくんば頚動脈へ打電せよ
失踪はスローモーション凪の底
乾湿の自在な袋福笑い
水頭のてっぺん開くブロッコリー

70

唯揺れる満載の豚暁に
獅子の爪立てて墓石の苔を掻く
峡の灯の大いなる翳轡虫
雑踏に抜きんでているピエロの手
初時雨のっぺらぼうの砂畑に
除夜の鐘悪夢は闇に返すべし
夥しモアイと化して初日待つ
冬蝿と夜半の林檎の無重力
春風の芯に連なる盲学童
靴底に海の音あり朧月
少年のしょっぱい骨格爆走す

80

夏草に優しき眼もて潜伏す
歯の疼き真昼の宇宙の何処より
蟻の列宇宙の座標に紛れ込む
暴飲の山腹吐き出せ蛍の火
浴場の沈黙梅雨の連絡船
ずぶ濡れの無法地帯に椰子の実よ
ケイタイの黄色い振動茗荷の子
刈田踏むの兎のリズムです
コスモスよ星の音するリュックサック
ハスキーな夕陽に少年切り立つや

90

夕凪に手話の手深く差し入れる
発熱の案山子の脊髄たて起こす
冬の虫砂丘の鎖骨に身をよせる
蟋蟀と我が墓つなげ石をもて
虎落笛俎板ぐっと噛んでいる
アラジンの呪文はハスキー吸入器
焼く今何人にも従わず
夜の水仙魚眼まんじりともしえず
冬木の芽沈む気団に撃ち込めり
屠牛嘗む飼い葉の底の冬銀河

100

少年の一撃の穴神がいる
千代紙におみなの微熱桃の花
スケートしまう母なるもののいる闇に
春の風邪懺悔のように持つ受話器
少年の帰路にこぼれる春の星
ポケットの底に立夏の海がある
泣き捨てしハンカチ鷺のコロニーに
沢蟹や森いっせいに皺になる
呑んでぽとりぽとりと渡り行く
霧に入りサーファー無色の鳥となる
あとずさりする闇じゅわっと

110

花南瓜頭を低うして空をみる
祭の夜毛細血管森に入る
くすぐったい僕の沈黙葱坊主
蝉時雨都会に未完の洞がある
梅雨の丘自転車どっとき下る
鉄骨の集中荷重黒揚羽
少年の影たて起こせ枯野中
枯葦に皓々として夜の芥
ちゃぶ台は浮遊物体床暖房
砕かれし冬灯魚鱗の湖と化し

120

夕凪は蜜のまどろみ手話の櫂
初茜砂上に沸き立つ衆生の
浜焚き火太郎の顔もつ異邦人
移動する無重力なりお年玉
蟹股の足跡漂着物の中
膏薬は空への小窓松の内
喘息の寝息星屑漂わす
山茶花や白鱗地に濡れやまず
おしゃべりのイントネーション朝鴉
いやさかの祝詞魚眼は藻にゆれて

130

おびただし呪縛の浮きを陸に干す
ウオーウオーと乙女泣きくる凪の底
まんさくの山あかときをほぐすなり
さまよえる少年春山吐き出せり
応答せよ蓮根のほの暗き穴
眸の色の融け行く疾走花盛り
チケットは羽毛の軽さ花曇
凧の骨抜いて春の夜しわしわす
さみだるる無臭の魚の誕生日
わがままな砂の手触りはまぼうふ

140

失踪は三日坊主よ黙る紙魚
かたつむり光の縫い目残します
花菖蒲溶接工が眼を閉じる
むささびは重たいハンカチ梅雨月光
目覚めたる蛙静かな沸騰だ
軟着陸少年の背をなづる
覗きみる我もけものよ谷螢
ボオルトの深い穴なり梅雨夕陽
鉄骨の空中溶接黒揚羽
空なんてだいっきらいさ線香花火

150

向日葵やボールの意志をぱっと受く
鈍痛の石つぶてもて夏草に
夕凪の底に融けだす父性かな
打ち水のどの石踏もうモンドリアン
カンナ咲く無風地帯の重低音
穂すすきの風をころがせ子らの上
窓枠にかっとはみ出す柿であり
ずぶ濡れのライダー光の筒の中
繃帯の解けて芒の風となり
金木犀沈黙と我はかりあう


160

手品師の鳩翔つあとよ白山茶花
戸襖をひとつ紛失日脚伸ぶ
ともしびを懐く冬蜂無実なり
凧糸の切れて麻痺する冬の雲
海に向く砂の足跡初日影
いびつなるものの始まり雑煮餅
枯芝の木立黙秘の麒麟なり
枯葦原鵜の群いちずに考える
満ちたりるもの眠らせん雛飾り
漂着や壜の内なる花畑

170

野ざらしの玉葱纏う光かな
やわらかい縄のからまり風ひかる
なだれ込む犬の放電かげろうに
花月夜鯨が海をみうしなう
鯨刀のこぼれ刃浸す春渚
ヒヤシンス夜明けのパトカーそこにいる
少年の息静かなり鉄線花
哭くように藍がとけだす夏の川

鬼由利の前のめりして駆けんとす
読経とは無為の調べや濃紫陽花

180

良く弾む水の筋骨朝の雷
抜け道は母の耳元桔梗咲く
草むしる老女己が影を撫づ
紅薔薇の余白に涙捨てに行く
髭を剃りベンガル虎に会いに行く
粉っぽい海原皆既月食下
月光のさざなみ寄する家並みかな
初秋のカーテンかすかなる痺れ
一滴のしずくのおもさ蝉時雨
哭き声はいつしか止みて凌霄花

190

さらさらの幸せ蛸の足を食う
夏烏賊の背筋汝を透きとおす
弧を描くよ賽の河原石
大夕焼け溶接工が浮上する
返すのは微笑みばかり白さるすべり
おもむろに弛める拳無花果よ
はらからの亡きがら想う虫の夜
鈴虫の背後の闇に海がある
今動く廃墟の時よ紋白蝶
一塊の光雲と化し大根引く

200

の実真綿でくるむものばかり
楼閣の影や砂上に光る葱
真夜中の眠りの凝集黒葡萄
風の根は芋茎の群の真下なり
外套や地下のホームにある視線
もやもやの帆を上げ少年走る夜 
豹革の長靴の中ぐずぐずいう
ふわふわの我を避けにし秋の蝶
冬かもめ風が眉間を突き抜ける
犬抱く落ち葉の中の温さかな

210

この世からふいにはみ出る絵の具かな
からからのバスルームなり冬月光
果てしなく踏みしめ全身耳となり
爆音の静かな上昇花盛り      
昼も夜も背鰭ゆらめく映画館
透き通るさくらの下の無重力
五月闇阿修羅と分かる走り方
持ち歩く抜けた差し歯よ五月闇
淡墨のまあるい滲み青葉梟
初老との緩衝地帯蜥蜴這う

220

深層の闇汲み上げる蛍かな
湿布貼る我は亭主よ半夏生
案ずるも念ずるもなく西瓜食う
熱風を分け入る首から上である
凧糸を繰るごと深夜テレビ繰る
銀色の鮫立ち泳ぐ夜汽車かな
かぎりなく近づくものよからすうり
横長の高速の耳のこる虫
禿山はけらけらとありテロリズム
猫の目はこんな目夜半の反射鏡

230

海光のあかるさ掻き揚げ桜海老
流星に駿馬の明眸輝けり
はてしなく缶けるものよ冬の星
木枯らしの真暗闇を焼き付ける
羽衣はひかりの息吹初夜空
本棚のノートの隙間にある寒さ
けものいる宇宙はみどりキューイ食む
陰陽は心の宇宙ふぐと汁
星雲の中心に居て雛飾る
彗星の先はじく音アイスホッケー

240

とんがった耳隠さんと春の野に
縞馬の歯ぐきで歌う花盛り 
人参の葉っぱよ少年眠りこけ
蛾の羽音我が指先をあざむけり
蜂の巣の生るゝは性器生るゝごと
みみずくの背後は緑のスキップだ
裏側の世の中見たし青蛙
万緑を出でて高速魚とならん 
金魚ではだめです人を探します
あお向けの背ナにさ走る雷の青

250

魚族との関り絶ちぬ夏の夜
少女とは豊かな蛙の弾力だ
夕焼けは父性目覚める竈なり
歌満ちる少女のたかさ赤蜻蛉
寝台の浮いて素足のさざなみや          
ずぶ濡れの言葉が消えた洗濯機
薄墨の太い輪郭さつまいも
蛾と蝶にはらり分かれし夕べかな
家人みな異星人なり虎落笛
債務者の寒灯に我従えり

260

波羅密や榾の煙に蛇の串
けもの臭とりのぞきます冬月光
口中をからからにして雪しまく
腕時計冬の蜥蜴のごとく落ち
冬の雲うーんとこっちへ起きて来い
解脱なり光る山の端ホーホケキョ
人肌に触れる乙姫若葉騒
梅雨の婆行李立てたり寝かしたり
棺を打つ音永久にあり天の川
山の端を映して植田呼吸する

270

銀漢や嘘こぼしたる如露の先
夏闇に漁火映る狐の眸
ガーベラの抱える闇を去りがたし
韋駄天はダリヤの脚で立ち止まる
沢蟹の空を挟んで昇るなり
枝豆で祓う男の厨かな
苦瓜や汝うからの一奇態
夕焼けのひんがしシーラーカンスかな
微笑みの距離に蜂いて歌うなり
夕焼けに山はボタンをはずします

280

花八ツ手重たいものを回す音
天空は柔らかくあり茎立ちす
雪原の列車は無重力となる
を欺く糸を垂れしかや
駆け昇る乾いた木霊春時雨
すっぽんの目をも粉とす旱星
五月雨はひかりの後ろ髪である
夏野中黒いサドルを置き去りに
知恵うすき人の指差す麦の秋
これぐらいの童のちんぽこ夜の蛙

290

地に憩う夫婦は老いて花南瓜
雨蛙さざなみ胸を膨らます
奈落こそ私の宇宙メロン食む    
父呼べば中丈夫です暮の春
抱くように出水に傾ぐ墓起こす
晩夏光よく寝ることが仕事です
高笑いして背ナを反る野分中
秋あかね丘は光の発電所
息が這う耳なり蟋蟀堕ちる夜
稲光り無限の砂に身をよせて

300

渓紅葉機関車山を哭き下る
空っぽの秋に逃げ込むけものかな
万物は挙動不審だ神無月
眼差しは雀の性器日脚伸ぶ
散り散りて鳩になります白山茶花 
かまくらや魔法のランプのともる翳
花影に無言の微笑みあるばかり
えごの花路上追われしものに散る
人間の混沌若葉のフライング
陽炎につまずく風の又三郎

310

無花果の黙秘よ奈落に転がるも
信じるは豚足夕陽澄みわたる
ゆすらうめ宇宙の疼き醒めぬまま
再生はスローモーション梅雨曇
騎士のごとガスボンベ立つ梅雨曇  
雑踏に昼寝の真空地帯あり
暁の蜩ひとはみずとなり
鳳仙花乙女は笑いの準備中
夜の蝉八百屋魚屋がらんどう
かなかなや痛いの痛いの飛んでいけ

320

虫すだく闇に飛び込み浮上せよ
遠景はパントマイムだ秋の郊
いませんか父の呼ぶ声身にぞしむ
音も無く過ぎる銀輪花野道
どん底に湧き出ずる水澄みにける
無花果よのんどに赤い叫びあり
ひつじ田にひるげをひとり食べにゆく
モルヒネはコスモスの色神の色
はれぼったい暁の湖鯔がとぶ
叩かれて戻らぬ凹み戸の微笑

330

この先は銀河鉄道禁土足
夥しい鴉の残像森消えて
真実と虚飾の墓原寒すばる
母拾うガラスは神の頬の骨
冬夕焼てらてらするは偽装なり
万丈の夢曳く犬や初茜
赤光の釣り橋駆けて冬空へ
釣り橋を冬のピエロとして渡る      
冬苺光のなぎさに乙女いて
薄氷の底に目覚まし鳴り止まず

340

盲目の佳人と語る息白し
冬蝶や夢の真裏のつっかえ棒
南天の実ほどの罪をゆるしもつ
まじっくの黒目がわらう紙の雛
栄光はしかと地にあり水仙花
透明な傘置き去りに放浪者
盲目にしてあるがまま春の星
恍惚の父達者なりきんぽうげ
春泥に真昼の星を隠しおく
寝たきりの父に尾鰭や梅の花

350

空っぽの山のこだまよ木の芽時
ためらわば白木蓮の道行かん
アーモンド咲く乙女らの眼は清く
逃げ水や背後に迫る我が放浪
きゅんとした桜あしたは無口です
鈴なりの御魂よ雨の白木蓮
ひとであることを捨てます花盛り
朧夜の微熱よ蒼き鮫に会い
豊穣を孕むさざなみ麦青し
平たけく海光散りぬ花菜畑

360

青葉騒群れの掟を破る癖
墓石のどこかがへこむ青蛙
かきつばた雨のち晴れに生るヽ闇
溶けていく深き思考よなめくじり 
夢の世とうつつのあわい額の花
抜きん出る緑の統べる麦の秋
蝙蝠や錬金術師の夕明かり
麦の秋おもちゃの兵隊片付ける
渦中には渦中の実あり梅雨晴間
真実を吐き出せ時雨のグラウンド

370

大根畑総立ちにして仁王立ち
高圧線冬の音符とト音記号
音の無いレースを狙え冬月光
木守り柿鴉の頬にかげりあり
ふるさとは雪を忘れてがらんどう
蚊が止まる墓の頭をはたきたり
青柿にうっすらとした黙秘権
故郷に祓う雪無し人も無し
冬の月総ての力地に放ち
冬の雨まぶた重たい街灯り

380

引き籠り許す家系よ日脚伸ぶ
息白き中に永久の光あり
泣く程に雪解の雫歌となり
加圧して我浮上せり花菜畑
春闇に生まれる泡の果てしなく
春の空掛かる木橋渡る音
手を合わせひとと見えん鼓草
微笑みは花の間に間に満つるとも
泡を吐き泡を呑みこむ春の闇                  
背を伸ばす耕人地球の芯となり

390

水鉄砲ぐじゅっと我を制すなり
雑踏を断ち割ってゆく夏の蝶  
そこここに地霊鎮めて額の花
抜け殻の白鶏吊るす砂の畑
万緑に千の白鷺潜む声
逃亡の痕跡よぎる植田中
音もなく世界の闇を舐める蛇
梅雨晴間流線型で走りきる
天空はやわらかくあり茎立ちす
群青のにおい微かに亀や鳴く

400

予感とは潤いにあり花衣
春の湖孤舟に天と地の揺らぎ
とめどなく皮相の裏に散る花よ
群青の春駒の群れ朝凪に
大地とは大いなるもの汐まねき    
里の宿ほやのほやのと春の宵 
春耕の鍬カンカンと鍛冶屋かな
啓蟄やほにょろほにょろと我解す
緑陰に汝滑空して止まる
冷奴洗い過ぎれば離縁です

410

再生はスローモーション梅雨曇
地蔵盆酸素ボンベによだれ掛け
砂山に無月の海亀うごめけり
斑猫や砂上に描く僕の円
怖れない形而上の柿である
無花実に母の弾力あかね雲
秋夕焼け真綿の中は染まらない
稲光鉄骨岩をくわえ込む
赤光のしずく賜わん実南天
熱情は死んだふりする冬椿 

420
 
純白の闇は空なり雪の牢
薄氷の底に目覚まし鳴り止まず
冬夕焼てらてらするは偽装なり
八方に柔らかくあり干し大根
白蕪闇の底より赤くなる
群青のにおい微かに亀や鳴く
春の湖孤舟に天と地の揺らぎ
盲目にしてあるがまま春の星
伝い来る道なき道よ春の泥
直情の犬の激突春の野に

430

春の雪清めたまえと申さくや
鈴なりの御魂よ雨の白木蓮
きゅんとした葉桜あさは無口です
柔らかい音符転がるさくらんぼ
墓石のどこかが凹む青蛙
かきつばた雨のち晴れに生るヽ闇
抜きん出る緑の統べる麦の秋
溶けてゆく深き思考よなめくじり
やんま飛ぶ車中や相対性理論
見透かすは蜻蛉の複眼おんなの目

440

銀漢や地球に掛ける抱き足場
大風車ダイダラボッチが目を回す
結界に立ち入るおんな頬被り
花野行く安全確認しています
飴玉の空き缶つるべ落としかな
冬凪に沈黙という呼吸かな
冬月光にぎる拳をほぐす声
春星にスプーン一杯分の蜜
息潜め花咲く村に浮上する
無呼吸の梅雨のホームを過ぎる貨車

450

鏡台の奥の夏闇軋みおり
あてどなき都会に蚯蚓の床運動
顔の無い蚯蚓が進む未来です
夏草の猛り嘲り鎌を研ぐ
油蝉時間の壁にぶつかりぬ
蝙蝠や逆さの発想しています
読み耽る紙魚の一匹殺さずに
小窓より入り来る闇よ残る虫
満月の海原水玉コレクション
藁塚は腹の座った農婦です

460

柿たわわ泣き笑いして暮らす母
冬三日月ふうっと息をかけてみる
冬温しゆがんだままを許す空
雪あかり情けのありかに辿り着く 
炊きたてのご飯や朝陽の雪景色
その辺が背中の真ん中春北斗
漏斗より滴る水の音色かな
指先を合わせる祈りおらが春
ぴょこぴょこと歩く花咲く山の駅
蟻地獄交尾の砂を掛けておく

470

木のくせを柔らかく組む秋の天
憎むべき父恍惚に無月かな
冷まじや勇気と躊躇のありどころ
生きている過失割合秋の蛇
秒針は逆臣であり掛け集め
向日葵はみんな隊長みな歩兵
ひぐらしの間遠に君のアイシャドウ
夕凪や舟漕ぐように飯を食う
かまつかや地獄の門もくぐるべし
空耳は天駆けるもの落とし文

480

泣きじゃくる蒼き凝集月光下
裸木に静こころなき陰部あり
冬鳥の目線よ父のおむつ替え
寝たきりも我も息する白障子
虎落笛見開く瞳立てる耳
涙腺の弛めの家系黄水仙
出る釘を打てば霙は雪となり
綿雪の一片われを乗せる舟
背ナに降る金銀砂子冬の虹
善人に阿修羅の眉根桜騒

490

梅明かり養老院にモアイの目
泣くほどに白は冴えぬる水芭蕉
万緑に消えし鳴き声人の声
叱られし後の微笑み茄子の花
世の中がぱっと透明夏うぐいす
蟇蛙全てを吐いて魚となれ
緑陰の木霊もいれて隠れんぼ
何もかも頷き通す魂迎え
蝉しぐれ目あき口あき耳があき
空域の一進一退くまんばち

500

すかすかの父の脳なり蝉が鳴く
おぼろ月恋するアトムのあにみずむ
万物の一として我芽吹く
父描くあらゆるものをまんさくに
一塊の青うごめけり亀鳴くや
おとがいの長い仮面や夜の新樹
浮草の我に墓なし布袋草
大夕焼ムンクの叫び止められぬ
寝たきりの裸の父を畏るべし
蟇蛙本音吐き出し義父介護

510

加齢とや平泳ぎして立ち泳ぎ
止揚する二物配合つまようじ
月影に父を浮かべて脈をとる
喉もとのつっかえ通る赤まんま
福島の青いばくはつ煙茸
黄落や万の喝采万の慈悲
そぞろ寒ペーパーバックに石ひとつ
手のひらの冬闇呑んで酔い明かす
寝たきりの裸身が金に冬の雷
冬瓜の引力圏に母います

520

滴りを怒りの両手で受けとめる
万緑に止まった時間入れてみる
パラソルを回して乱世の極座標
いずこにも夕明かりありさくらんぼ
黙考す最も小さい青蜜柑
東北へ夜なべ仕事をしにゆかん
冬の陽に笑みもて手話のひとりごと
黄水仙束となって掛かって来い
風花に父の息あり鼓動あり
沢庵や父いる世界のお昼時

530

煮凝りや昨夜語りし嘘ほんと
祓いたまへ浄めたまへと摘む春菜
解かれたる犬ひた走る陽炎に
あおき傷染みて光りぬ初夏の
黄落の大地に大きな耳がある
赤犀の平衡感覚夕闇に
山霧に不沈戦艦浮上せり
寒林に獣追い越す風にあう
駆け巡るでくのぼう居て冬ごもり
冬の凪もぬけの殻のまちづくり

540

沢庵を噛む音相続放棄かな
春真昼ふと見失う旅鞄
闇出でて鈴懸の道点りたる
チューリップ天を尊ぶ口づけを
ペンギンのジャンプためらう五月晴れ
羽根広げ回る孔雀や新樹光
黄蜀葵ネバーネバーギブアップ
緑より黄への弾力麦の秋
青嵐忍者のような猿生れて
木の実雨肌柔らかく佇めり

550

万緑やささめく人と微生物    
油蝉時間の壁にぶつかりぬ
骨拾い純白の夏組み直す
空蝉や五十年後の空の色
まだ秋が見つかりませんかくれんぼ
コスモスや私のことは語らずに
鳥のみぞ知るや花野の満るとき
寝たきりを担いで葬の端に立つ
藁塚に宿る田の神いやさかに
うたかたを創造します渓もみじ

560

永遠に途切れた電話枯蟷螂
わすれ雪津波瓦礫の山を解く 
陸前や巣組み鴉の羽の音
復活の血脈をもて耕さん
冬雨に真っ赤な尾灯の群れ動く
虎落笛布団は悲しい耳である
盂蘭盆会黙する人と語る人
夏の闇バイオ虫けらぱくぱくす
しなやかに時間を止める守宮かな
沈黙や路傍に転がる蝉の声

570

青鷺のくちばし水平思考かな
蜘蛛の糸輝く彼方目指すなり
生きれるか食べてゆけるか狐茸
星月夜微笑む魚の座はいずこ
天空に滲む蛇の眼あけの春
旱星水の匂いを誰か知る
暗闇にポケット多し猫の恋
片隅にゴリラの弾力春愁い
ハイビスカス煌々として叫喚す
つかのまのエンゲージリング夕蛍

580

ほおたるは悲しきジュエリー草かげに
蛍飛ぶ川の果てなる銀河かな 
大盛りのゴーヤの辺り磁気あらし
油蝉鉄をくり抜くごとく鳴く
向日葵の倒れて夜半の地雷原
熱帯夜サイレン走り抜ける風
空蝉や堕ちて呵責の陽を浴びる
夏闇のどん底ふわっと持ち上がる
生涯を分かつ決断晩夏光
呟けば漣光る晩夏かな

590
 
霧こめて浜龍宮へ傾ぎおり
鰯雲筋貫くはゲームなり
月の雁もう母の耳探すまじ 
水の秋泡にはならぬ泡ありて
星人の指の交感あきあかね
木守柿嘴太鴉の領分に 
枯野行く移動図書館ソクラテス
一葉の枯葉のうら側おもて側
かがり火に何をか問わん去年今年
白き馬初日の富士に目覚めけむ

600

実万両ほこらの中に神ふたつ
一室は宇宙空間目貼りして
還暦は遥かな絵本冬夕焼け
迫りくる白息我をうべなえり
夏闇に紛れる邪念濾し去りぬ
閉ざされし道に触るゝはあやめかな
解かれたる家の残像青揚羽
蚊蜻蛉の堕ちて輝く昇る陽に
はれぼったい右目の景色夏の風邪
我とざすシャッター全開青嵐

610

赤蕪の芯に真白きいのちあり
猫の目と猫のきき耳夜の新樹
花栗の天井界や栗鼠の脚
蜘蛛の囲に赤い阿吽の眠りあり
我が妻と拓く道あり立葵
赤錆の重たさ父の鉄兜
蚊蜻蛉の闇に絡まる羽音あり
青柿の墜ちて丁半裏おもて
夏館紙一枚を貼りて去る
空蝉の巌離れぬ面構え

620

一陣の風に還らん青揚羽
歪なるままの晩生胡瓜畑
夏草履沖への畏敬サーファーに
一筋の放生川やひかる町
やみくもに飛び交う電子黄金虫
蘇ることをば問わん蝉しぐれ
地の神に祝詞奏上蚊やり香
放生会鳥を放てば地にとまる
天竺のひかり纏いて甘夏の
貧するも尻に肉あり夜の秋

630

薄目してやり過ごします秋桜
ばった跳ぶ堂々巡りの我の上
冬の野の我にこと問う友のいて
ソクラテスカラーンコローンと冬ざるる
直角に曲がってゴキブリ冬に入る
着ぶくれて眼鏡の光る闇の中
返り花玉石満つる頭陀袋
虎落笛妻の寝息の康らけく
黙々と雄羊ありく冬夕焼け
篝火に胸襟開く漢いて

640

我が夢を今日語らんと冬の鵙
冬椿ひとつは踏まぬ乱世かな
早春のラジオ体操舞う我よ
浅蜊汁朝のページをめくります
春の野に葬る父の鉄兜
春の泥付けて仙台四郎かな
山桜涙忘れる雲に乗る
梅雨深し風呂屋の桶の空の音
流星の墜ちて森羅の眼となりぬ
敗戦忌馬笑の中に草笛よ

650

旱星父戦争に痴れしかば
帰還せし父のベッドはさざ波に
紙魚を踏むざわわざわわと歌いつつ
鎮めやも茂りの底を這う戦気
街中を真平らにして地虫鳴く
息止瞳孔の明けば光輪夏闇に
めて茅の輪に通す脳の翳
妻担ぐ我炎熱の機関車や
電線に椋鳥群れて黒い音階
種無しの葡萄に種の舌触り

660

大銀杏星の落ち来る夜の深さ
実柘榴を置いてきぼりのモダニズム
蜉蝣の微かに光る谷の底
墜ちたるも尚も芳し果鈴の実
舞うように旗振るひとや暮早し
猪の阿羅漢像をかすめたる
観月会師はひたすらに歩くなり
柿を?ぐ吾こそ頑固親父なり
短日の我が靴音の高からむ
スーッと抜く烏賊の背筋よ凪の夜

670

犬の眼の高さに浮かぶ冬の月
焚火より離れて語る波動論
魂の深層崩壊冬ぬくし
柚子浮かべ我が想念を沈めたり
篝火のほむらの先に手を合わす
呟けば粒が重たい冬の雨
ふるさとは朧に帰る家の無し
難民の毛布よ銃声間近なる
棺送る愛犬もゐて哭き黙る
花盛り誰にこと問うことあらん

680

若葉騒傷が癒えれば立ち上がる
影武者に梅雨の晴れ間の翳ありて
ずれ動く万緑我に定めなし
夜桜を抜け出て正気取り戻す
山上の城包囲せむ若葉騒
ゆるぎなき光の帆なり立葵
魔女去りしあとの温もり濃紫陽花
噛みしめるティッシュの甘さ旱星
黒揚羽ふわり降り来て閃きぬ
蚊食鳥逆さにものを見て正す

690

旅鞄ふと見失う日の盛り
巫女と我外す板戸や秋祭り
でぶっちょとのっぽの神輿秋祭り
未だ人見ざる花野に我ゆかん
大夕焼け無尽の海を呑んでいる
真夜中に秋の蚊を追う大男
どーまんの蟹殻捨てし崇めつつ
うたかたの浮かばぬ水や曼珠沙華
山百合や永久に微笑む羅漢像
切株に阿羅漢の相月の雲

700

ともしびに深まるかをり金木犀
会釈して過ぎ行くシスター金木犀
金木犀真昼の町の静かなる
木犀の大樹の下の一会かな
晩鐘の余韻よ冬鳥黙したる
色鳥の光纏いて冬闇に
家中を叩きて失せし虎落笛
冬椿息吹き返し生きている
我がペンに賜る光り寒の雷
我を追う木枯し海にかわしたり

710

凩の来て双肩を揺さぶれり
平けき苫屋こそあれ寒卵
何かしら偉大なるもの寒卵
凩や戸袋というありどころ
早春の駅にぽつりと影法師
我の名は門付け芸人春来る
婆守る小犬とすみれ片すみに
廃校の回る時計や鳥雲に
おぼろ夜の狼駆ける策の中
辻々の戸や窓開いて春の虹

720

待ち人のふと横にいて聖五月
美しきものよ飛び交え張る田水
波逃げる山に親と子クローバー
空ボンベくわーんと鳴りて梅雨晴間
貨車過ぎる間の無呼吸梅雨の駅
蘇る若葉よ背ナをポンと打つ
ボワーンとす我水無月の水分子
谷蛍覗く人の眼けものの目
目覚むればビルの谷間に地虫ゐて
虫干やはらりと落ちし我が句稿

730

群燕の空鎮まりて葦の花
赤とんぼほど良き高みに母眠れ
樹木葬奥は山畑蝉しぐれ
カンナ咲く浜辺よ魚が撥ねている
蚊帳に入るように我が家の戸を開ける
濫觴のいずこにありや天の川
岩陰にましら酒あり天の川
淵何処うたかた何処天の川
沖ノ島伝ひゆかばや天の川
自在なる我は銀河の泡である

740

凹みたる薬缶に汲みし秋の水
津波去り人又通う花野かな
晩秋の回転木馬に油を差して
枯野行く象の眼差し遥かなり
本当の林檎の入る紙袋
雨月なる軒端深きに九十九神
鐘の音はセピア色なり月の雨
一束の葱を抱えて闇行けり
天地人大根と我にある力
お日様に隠すもの無し掛け大根

750

浜焚火子犬と小僧顔を出し
茶の花や私の空の有りどころ
月光に濡れにし道を踏み惑う
巌とは初日の色を塗るところ
恐竜の眠りよ雪の東尋坊
虎落笛哭き黙るまで肝据えて
鬼やらい真昼の星よ内にあれ
またひとつ借り返してや梅の花
彼方へと思う我ゐて花菜風
身籠りしひとの微笑み山桜

760

婆ひとり守るすみれに朝日かな
ほの暗き世を集めてや桃の花
靴底の穴に石噛む朧かな
分け隔てなく会う力末草
歩を止めてこと問う我や杜若
鳳のひかり留めて麦の秋
庭に鮫今麦秋の空青く
微笑めば筍の伸びる昼の月
万緑の真水を飲んで存在す
蟇蛙じゅわっと吐いてぽぽと吸う

770

余燼とや濃紫陽花の散り敷くを
梅雨寒し未踏理論に迷い込む
鬼由利の無常の風に開き切る
思い込む夏手袋のうらおもて
滴りの染み入る程に研ぐ刃先
透明な蝸牛より見える空
ロボットと人とのシーソー蟻のゐて
守るべき人ゐて稼ぐ葛かずら
はぐれ蚊の我に従い家に入る
一本のごうやよカーブする視線

780

蛇放つ遠心力もて逸脱す
空蝉にポテンシャルあり朝茜
青嵐当たって砕けあっかんべえ
うっすらと昇る湯けむり虫の闇
狐目と無月の露天風呂に入る
打たせ湯に魚となりたる無月の夜
垂れ下がる糸瓜がひとつ乱気流
秋虹に濡れた翼を立て起こす
言い洩らしそのままなれや鰯雲
がちゃがちゃや尽きることなき宇宙論

790

虫の声止みて微かに星の声
虫の声乗せたや宇宙エレベーター
職捨てて曼珠沙華の火振り向かず
百合の木の枯葉地を舞えどうどどう
饒舌も無口も眠るちちろ虫
柿?げば空がすとんと腑に落ちる
顔の無い農業ロボット捨案山子
黒牛のまつげが光る豊の秋
鳥集え立て起こしたる柿の木に
あと言えばおうと答える星月夜

800

秋水に戦気を溶かし呑み干せり
穴に入る蛇にひとつの昼の星
冬の陽を集める恥を知る為に
棹をなす鵜の声滲む冬雲に
惑えども冬枯れの尾に従わず
冬ざれの小石集めていしずえに
着ぶくれて我考える人であり
人迎え人また送る寒牡丹
手の鳴るは山茶花越しの隣かな
冴え返る神の創った赤い土

810

沖の船見ている釣り目は水色に
咳きこんで四角い星を見つけたり
春雲に世界のわらべの声乗せて
川の鵜は光の曲のコンダクター
梅のもと掘るな弥生の文化圏
童らの放りし座布団むささびに
桜騒夜べの涙は消して笑む
葉桜にぶつかり思考を転換す
母泣かす子の開け初めむ北の窓
花咲くも散るも古希なり博打うち

820

ロボットに牽かれる人よ鳥雲に
怒りなす炎は消えて草萌ゆる
昼蛙星のありかを知りたるや
我が庭にネクストという巣箱あり
黒葡萄厚くゆがんだ皿の上
解脱する仮想現実青あらし
音も無く転がるもの梅雨の坂
牛歩とや背後に梅雨の音を曳く
透き通る骨と筋もつ海月なる
感動は私の野生新樹光

830

言問はば砂丘の女よ梅雨の傘
あの世との蜥蜴の残す切り取り線
ひと会わすこと楽しけれ星まつり
星今宵ひかりのきぬをうちかけて
実を落とす大樹に天の眼あり
救いたる雛の声きく秋あした
身を焦がすほむらの先は火蛾となり
蜜を欲る秋蝶風にうべなえり

蟻運ぶ翅の行方の戸を開く
けものの目もて瞬かず釣瓶落とし

840
野心なきひかりを放つすすきかな
方円に秋水を切る自在かな
秋天にずれを正して老骨音                                   

筋斗雲大夕焼けを充電す                                     

秋光に透く鳥ことり吾娘います                                   

山蔭に子等の隠れ家あけび喰う                                  

ひそやかに鳴く蟋蟀よ哲学す 

舌端に罪なる記憶あけび喰う 

太陽の真中の柿をぐいと捥ぐ

柿くわえ火魂となりて発つ鴉

850

神の留守我と妻居て相祈る

年輪に罅入る音や冬ざるる

実柘榴や愛することの罪嗤う(warau)

枯葉踏む我に未だある底力

冬水をゴクッと心頭滅却す

残り菊あまねく世事に背を向けず

2019年12月15日 856句